第 2 章 情報の流れ

この章では、WebSphere Product Center を使用して商品情報を管理する方法の概要を説明します。効果的な PIM インフラストラクチャーを構築する点でかぎとなるのは、単一の構造化されたリポジトリーに情報を集約することです。以下の 5 つのプロセスによって、WebSphere Product Center を使用して管理する商品情報のフローが構成されています。

: この章で説明する情報の流れは、簡単なカタログの作成の例を使用して説明しています。 WebSphere Product Center は、いろいろな複雑さや形式のデータをインポートしたり、エクスポートしたりできます。


1 - 商品情報の収集と検証

WebSphere Product Center の PIM フローの最初のタスクは、複数の外部システムからデータを収集し、WebSphere Product Center に送信することです。外部システムには、ERP、レガシー、データベース、およびスプレッドシートが含まれます。WebSphere Product Center のインポート・コンソールを使用すると、様々なデータ・ソースからデータをカタログにインポートできます。

データのコレクションは、WebSphere Product Center にフィードされた、定義多様なデータとファイルの定義と実行によって構成されています。データがロードされると、ビジネス要件にかなうように加工したり標準化したりできます。個々のデータをすべて集めると、完璧でかつ簡単にブラウズできる商品カタログが作成されます。

以下のステップを実行して、WebSphere Product Center にデータを収集します。

1. ファイル仕様の作成 - 着信ファイル形式を定義します。

2. カタログの作成 - カタログ/基本仕様を定義します。

3. ファイルからカタログへのマップ - ファイル仕様と基本仕様をマップします。

4. フィードの実行 - カタログに商品情報を取り込みます。

ファイル仕様の作成

データの収集の最初のステップは、着信ファイルの基となる型を定義することです。WebSphere Product Center の GUI ウィザードを使用すると、外部ファイルのデータ構造を示すファイル仕様を作成できます。

ファイル仕様の目的は、着信ファイル内で個々のフィールドを配列する方法についての情報を提供することです。これには、着信ファイルの各フィールドに名前を付けること、さらにはこうしたフィールドに長さやデータ型などの属性情報を提供することが関係しています。

ファイル仕様では、外部データ・ソースを WebSphere Product Center にインポートすることが必要です。データ・ソースが変更された場合、ファイル仕様も変更を反映するために変更できます。

 

図 1 - ファイル仕様の作成

ノード

ファイル仕様を作成すると、着信ファイルの各フィールドが定義されます。WebSphere Product Center では、ノードという用語はフィールドと同じ意味です。ですから、ファイル内の各フィールドはファイル仕様内のノードになります。

ファイル仕様を作成するには、ノードを 1 つずつ追加します。ノードの順序は、ファイル内のフィールドの順序に対応しています。 作成後にノードの順序を簡単に変更できます。

 

図 2 - ファイル仕様ノード

属性

ノードの追加後、各ノードに属性を定義します。属性には、最大長、最大/最小オカレンス、およびデータ型などの詳細が含まれています。

 

図 3 - 属性の定義

ファイル仕様の保管

ノードすべてを定義した後に、ファイル仕様を保管します。必要に応じて、WebSphere Product Center の仕様コンソールを使用して、任意の時にファイル仕様に変更を加えることができます。

この時点で、データの基本となる型すべてに関して定義しました。次のステップは、カタログを作成することです。そのためには、外部ファイルからのデータが WebSphere Product Center のどこに配置されるべきかを判別します。


2 - マスター・カタログの作成

WebSphere Product Center の強力なコンテンツ管理システムは、マスター商品情報リポジトリーに基づいています。そのリポジトリーは、商品全体、価格設定、および顧客ベースで商品を効果的に販売促進するために必要な記述的な情報を集約します。

集中的に商品情報を保管して管理するため、WebSphere Product Center にマスター・カタログが作成されます。マスター・カタログは、会社の商品情報を保管するために使用されるので、WebSphere Product Center の心臓部と言えます。以下の機能が提供されています。

カタログの作成

外部ファイルからアイテムを取り込むためにインポート・フィードを実行するまでは、カタログを作成しても空のままです。コンテンツがマスター・カタログにいったん掲載されると、WebSphere Product Center のプロダクト・マネージャー・モジュールを使用して、情報を拡張したりカスタマイズしたりできます。

WebSphere Product Center にカタログを作成するには、基本仕様を作成して、カタログ内のデータ・フィールドを定義しなければなりません。その後に、カタログをフォーマットする方法を決定します。通常カタログ仕様は一度だけ定義しますが、カタログ保守のニーズに応じて柔軟に変更できます。

基本仕様には、必要に応じた数のフィールドを含めることができます。各フィールドには属性情報を定義でき、基本キーとして 1 つのフィールドを識別することが必要です。基本キーは、カタログ内の固有 ID の役目を果たします。

カタログ情報を編成するため、階層が作成され、カタログに関連付けられます。階層は、カタログのアイテムを配列された構造にグループ化します。

: カタログに作成される基本仕様は、カタログ内のすべてのフィールドに名前と属性情報が定義されるという点でファイル仕様と同様です。

 

図 4 - 基本仕様の定義

ファイルからカタログへのマップ

ここまでで、外部ファイルを定義するためファイル仕様が作成され、カタログにはカタログ仕様で定義された各データ・フィールドが作成され、カテゴリー仕様はカテゴリー化された構造を定義するために関連付けられました。
次のステップは、外部ファイルのカタログへのマッピングです。

マッピングの目的は、着信ファイル内のフィールドをカタログ内のフィールドに経路指定する方法を WebSphere Product Center に指示することです。WebSphere Product Center は、マッピング・コンソールを使用して、簡単にマッピングします。

 

図 5 - ファイルから基本仕様へのマッピング

マッピングが完了すると、フィードを実行して、外部データを WebSphere Product Center カタログに取り込めます。

 

図 6 - マッピング仕様

インポートのセットアップ

ここで言うインポートとは、ユーザーが一式の指定された情報を適切にインポートするために様々なシステムで特定のアクションを実行する必要がある場合のことです。通常これには、繰り返し指定しなければならないとても多くのパラメーターが関係します。 WebSphere Product Center の簡単な GUI ウィザードを使用すれば、こうしたアクションを一度指定して保管しておくと、後でまた再利用できます。

WebSphere Product Center でのインポート・フィードのセットアップには、外部データ・ソースのロケーションとタイプの定義、そしてインポート済みデータの検索とカタログへの取り込み方法の指定が関係します。

この情報すべてを WebSphere Product Center に提供すると、フィードに保管され、後にスケジュールに従ってまたは手動で起動することができます。

インポートの実行

集約を作成するのに必要なすべてのステップを完了すると、着信ファイルから指定された情報がカタログに取り込まれます。

インポート・コンソール内のボタンをクリックして手動で実行するか、WebSphere Product Center のスケジューラーを使用して自動的に実行するように、フィードを設定できます。望まれる場合には、正常に行われたプロセスまたは完了しなかったプロセスに関するワークフロー・アラートをフィードに組み込むことができます。

 

図 7 - カタログにデータを取り込むフィードの実行


3 - カタログの編集と強化

WebSphere Product Center のアイテム管理ツールを使用することには、商品情報に関して以下の利点があります。

カタログの変更

商品データを WebSphere Product Center に集中させると、アイテム管理のタスクが簡単になります。WebSphere Product Center プロダクト・マネージャー・モジュールを使用すると、以下のタスクを実行できます。

データ入力画面

WebSphere Product Center のデータ入力画面を使用すると、コンテンツ・オーサリング・タスクを実行できます。この画面はタブ付ビューによってカスタマイズできます。データ入力画面の設計によって、コンテンツ管理者は 1 つのインターフェースで単一のまたは大量の編集を簡単かつ効率的に管理することができます。

 

図 8 - 「単一編集」画面

 

図 9 - 「複数編集」画面

カタログ差分

コンテンツ変更を監査するためにバージョン管理をインプリメントできます。ユーザーはバージョン間の変更点を表示し、必要に応じて前のカタログ・バージョンにロールバックできます。品質制御のためにユーザーは、追加、削除、変更された、または未変更のカタログ内のアイテムを表示できます。

カタログ・ロールバック

カタログ・ロールバックは、以前のカタログ・バージョンに戻るために使用します。すべてのカタログはバージョン制御を使用して作成されるので、ユーザーは必要に応じて以前のカタログ・バージョンにロールバックできます。カタログに加えられた変更が後に不必要であることが分かったり、偶然に変更してしまった場合に、特にこの機能が役立ちます。

カタログ検索

カタログ検索は、各カタログの左ペインにある検索機能を使用して簡単に行えます。アイテムまたはカテゴリーの検索とその結果は、左ペインに表示されます。さらに詳しい検索を行う場合には、基本選択または拡張選択を作成します。「リッチ検索」画面も利用できます。この画面には、ノードおよび値に基づく詳細検索が提供されています。

 

図 10 - 左ペインでのカタログ検索機能

 

図 11 - リッチ検索


4 - カスタム・カタログの作成

顧客の特定のニーズ (固有アイテムの選択、契約価格、以前の購買アクティビティーに基づく顧客特有の取引管理など) に応えるために、または異なる顧客マーケットをサポートするために、カスタム・カタログを作成できます。WebSphere Product Center を使用すると、情報を複製して別個のカタログを作成する必要がなくなります。

リンク・カタログ

WebSphere Product Center の強力な機能によって、任意の属性を持つ 2 つのカタログ仕様同士をリンクできます。これにより、カタログ間の複数リンクが可能になり、より複雑な関係のモデル化ができます。

各カタログには独自のカスタム・フィールドを保持できますが、カタログのリンク関係に基づいて別のカタログのフィールドを継承することもできます。ですから、複数のカタログ間で共通の情報を利用して、カスタマイズした情報をカスタム・カタログに保管できます。たとえば、あるカタログに保管されている価格設定情報を別のカタログ内の中心となる商品情報にリンクさせることができます。

階層

階層を作成することによって、カタログで使用できる情報構造 (分類区分) を提供できます。つまり、階層はカテゴリー化された構造をカタログに提供します。

WebSphere Product Center では、カタログと階層は 2 つの独立したエンティティーです。つまり、カタログ内のアイテムのカテゴリー化に関連した情報がなくても 1 つ以上のカタログを作成できます。コンテンツは、階層とは別に保管されます。

また、多くの別個のカタログに関連付けた 1 つ以上の階層を作成することも可能です。階層を作成すると、多対多の方式でカタログに階層を関連付けることができます。これは、カタログが複数の階層を使用でき、階層は多くのカタログによって使用される可能性があるということです。

カタログを階層に関連付けることによって、任意の分類区分で情報を表示できます (UNSPSC、UDEX、eCl@ss、カスタム業界標準など)。


5 - カタログの発行

WebSphere Product Center のシンジケート (エクスポート) は、任意の宛先に商品情報を配布または発行するためのメソッドです。

カタログのすべての情報を加工して編集すると、WebSphere Product Center で内部または外部の宛先用にカタログをカスタマイズして作成することができます。カスタム・カタログは、顧客、パートナー、および印刷したカタログ、または会社の Web サイトに自動的に発行できます。

WebSphere Product Center のエクスポート・コンソールを使用して、以下のタスクを実行します。

宛先仕様

WebSphere Product Center でシンジケートを作成すると、宛先ファイルの正確な要件を定義するために宛先仕様が作成されます。ファイル仕様やカタログ仕様と同様、宛先仕様の各ノードに属性を定義できます。

シンジケートの間に、宛先仕様の選択によって、指定された要件を順守したファイルが生成されます。

アイテムのグループ

エクスポート・モジュールを使用すると、カタログ全体からのアイテムのグループの基本または拡張選択を、特定の宛先に送ることができます。

基本選択には、カタログ、カタログ・バージョン、およびシンジケートで使用するカテゴリー・ツリーが含まれます。拡張選択では、カタログからアイテムのグループを選択するためのルールを指定できます。この選択は、最新のカタログ・バージョンにのみ使用して、将来使用するために保管しておきます。

シンジケート・タイプ

シンジケート・タイプを選択すると、ユーザーは WebSphere Product Center でカタログ全体をシンジケートするか、カタログを単に更新するかを選択するオプションを持てます。これによって、カタログ差異のシンジケートが可能になります。

カタログからの宛先仕様へのマップ

カタログからの宛先仕様へのマップは、カタログ内のフィールドを宛先ファイル内のフィールドに経路指定する方法を WebSphere Product Center に指示する点で、ファイルからのカタログへのマップに類似しています。シンジケートが正常に行われるためには、このマッピングが必要です。

配布宛先

カタログをシンジケートすると、承認または検査 (あるいはその両方) の目的で複数の宛先に送ることができます。ユーザーは、シンジケートの配布コンポーネントを使用して、カタログの送信先の宛先を選択できます。カタログは、E メール (E メールの本体) または FTP の形式で送信できます。

アラート

ユーザーが定義した条件に基づいて、複数の人にアラートが起動されるようにcを構成できます。インポートまたはエクスポート・フィードが正常に行われたか、または失敗したことを通知するアラートを作成します。