2.2. インストール前に行う作業

2.2.1. あなたのコンピュータの部品一覧を作る(Inventory)

FreeBSDをインストールする前に、 あなたのコンピュータで使用している部品の一覧を作っておいたほうがいいでしょう。 FreeBSD のインストールルーチンは、部品 (ハードディスク、 ネットワークカード、CDROM ドライブなど) のモデル番号とメーカーを表示し、 さらにこれらのデバイスについて、使用する IRQ, IO ポートまで含めて正しい設定を認識しようと試みます。しかし、PC ハードウェアによっては、この過程は完全には成功せず、FreeBSD が認識した設定を修正しなければならないこともあります。

Windows® や Linux などの、 他のオペレーティングシステムが既にインストールされている場合、 それらのオペレーティングシステムでのあなたのハードウェアの設定を参考にすると良いでしょう。 拡張カードなどの設定がよく分からない場合は、 カード上の印刷を見ることで分かることもあります。 よく使われる IRQ は 3, 5, 7 で、IO ポートアドレスは通常 0x330 のような 16 進数で書かれています。

FreeBSD をインストールする前に、 この情報を印刷するか書き留めておくかすることを勧めます。 例えば次のような表です:

Table 2-1. サンプルデバイス一覧

デバイスの名前 IRQ IO ポート メモ
1 台目のハードディスク N/A N/A 40 GB, Seagate 製、プライマリ IDE マスタ
CDROM N/A N/A プライマリ IDE スレーブ
2 台目のハードディスク N/A N/A 20 GB, IBM 製、セカンダリ IDE マスタ
1 つ目の IDE コントローラ 14 0x1f0  
ネットワークカード N/A N/A Intel® 10/100
モデム N/A N/A 3Com® 56K ファックスモデム、COM1 に接続
...      

2.2.2. データのバックアップ

FreeBSD をインストールするコンピュータに価値のあるデータが入っている場合、 確実にバックアップをとり、 さらに正しくバックアップがとれていることを確認して下さい。FreeBSD のインストールルーチンは、ハードディスクに実際に書き込む前に確認を求めますが、 一度実際に書き込む作業が始まってしまうと、 もう元に戻すことはできません。

2.2.3. FreeBSD をインストールする場所の決定

FreeBSD を、ハードディスクすべてを使ってインストールする場合は、 この時点で確認しなければならないことは何もありません -- この節を飛ばすことができます。

しかし FreeBSD を他のオペレーティングシステムと共存させる必要がある場合は、 データがディスクにどのように配置されており、 それがどのように影響するかを大まかに理解する必要があります。

2.2.3.1. i386™ アーキテクチャでのディスクレイアウト

PC のディスクは個別の塊に分割することができます。 これらの塊はパーティションと呼ばれます。 PC では、ディスク 1 台あたり 4 つまでパーティションを作成することができます。 これらのパーティションはプライマリパーティションと呼ばれます。 この制限を回避し、 4 つ以上のパーティションを作成するために拡張パーティションと呼ばれる新しいパーティション形式が作られました。 ディスク 1 台につき 1 つだけ拡張パーティションを作成することができます。 論理パーティションと呼ばれる特別のパーティションは、 この拡張パーティションの内部に作成することができます。

それぞれのパーティションは、 そのパーティションに含まれるデータの形式を示す数字である、 パーティション ID を持ちます。FreeBSD パーティションのパーティション ID は 165です。

通常、各オペレーティングシステムは、 それぞれ独自の方法で個々のパーティションを識別します。例えば DOS や Windows などの DOS の子孫は、 プライマリパーティション及び論理パーティションそれぞれに C: から始まる ドライブレターを割り当てます。

FreeBSD はプライマリパーティションにインストールしなければなりません。 FreeBSD はあなたが作成したファイルを含むすべてのデータを、 この一つのパーティションに保持することができます。 しかし複数のディスクがある場合はそのうちのいくつか、もしくはすべてに、 FreeBSD パーティションを作成することもできます。 FreeBSD をインストールする時は 1 つのパーティションを使用可能にしておかなければなりません。 このパーティションは、新たに用意した空白のパーティションでもいいですし、 または無くなっても構わないデータしか入っていない、 既存のパーティションでも構いません。

すべてのディスクで、既にすべてのパーティションを使用している場合は、 他のオペレーティングシステムで提供されているツール (例えば DOS または Windowsfdisk) を使用して、 そのうちの 1 つを FreeBSD のために解放しなければなりません。

予備のパーティションがある場合にはそれを使うこともできます。 しかし、まず始めは 1 つまたは複数の既存のパーティションを縮小するということを考えても良いでしょう。

FreeBSD の最小のインストールには、100 MB 程度のディスク容量が必要です。 しかしこれは非常に小さなインストールであり、 自分のファイルを作成するスペースはほとんど残らないでしょう。 現実的には、グラフィカルな環境が必要ないのであれば 250 MB, グラフィカルユーザインタフェースを使用するのであれば 350 MB 以上は必要でしょう。 その上、多くのサードパーティ製ソフトウェアをインストールするならば、 さらに多くのスペースが必要になるでしょう。

FreeBSD のためのスペースを用意する際、 パーティションサイズを変更するために、 PartitionMagic® などの商用ツールを使用することができます。CDROM の tools ディレクトリにはこれと同様のことができる FIPS 及び PResizer という 2 つのフリーソフトウェアツールが含まれています。 FIPS, PResizer および PartitionMagic は、MS-DOS® から Windows ME で使われている FAT16FAT32 パーティションのサイズを変更できます。 PartitionMagic は、 NTFS のサイズを変更できることが知られている唯一のアプリケーションです。 これらのツールのドキュメントも同じディレクトリにあります。

Warningこれらのツールの使用方法を誤ると、 ディスク上のデータが消えてしまう可能性があります。 使用前には必ずバックアップをとって下さい。

Example 2-1. 既存のパーティションを変更せずに使用

既に Windows がインストールされている 4 GB のハードディスクが 1 台接続されており、そのハードディスクは 2 つのドライブレター C: 及び D: に分割されており、それぞれのサイズが 2 GB である PC を使用していると仮定します。 またこの時、C: には 1 GB, D: には 0.5 GB のデータがあるとします。

ドライブレター 1 つあたり 1 つのパーティションですから、 あなたのディスクには合計で 2つのパーティションがあるということを意味します。 この場合、D: にあるデータをすべて C: にコピーすれば、 2 つ目のパーティションを解放し、FreeBSD のために使うことができるでしょう。

Example 2-2. 既存のパーティションを縮小する

既に Windows がインストールされている 4 GB のハードディスクが 1 台接続された PC を使用していると仮定します。さらに Windows をインストールする際、1 つの大きなパーティションを作成し C: ドライブとして 4 GB を割り当てたとします。 そして現在 1.5 GB 使用しており、FreeBSD で 2 GB 使いたいとします。

FreeBSD をインストールするためには、 以下のどちらかを行わなければなりません:

  1. Windows のデータをバックアップし、インストール時に 2 GB のパーティションを作成して再インストールする。

  2. 先に述べた PartitionMagic をはじめとする Windows パーティションを縮小するツールを使用する。

2.2.3.2. Alpha アーキテクチャでのディスクレイアウト

Alpha 上で FreeBSD を使用するためには、 FreeBSD 専用のディスクを用意する必要があります。現在、 他のオペレーティングシステムと、ディスクを共有することはできません。 あなたの持っている Alpha マシンによりますが、ブートが可能でさえあれば、 このディスクは SCSI ディスクでも IDE ディスクでもどちらでもインストール可能です。

Digital / Compaq のマニュアルの例に従って、SRM の入力を大文字で示します。SRM 自体は大文字小文字を区別しません。

あなたのマシンのディスクの名前や形式を知るためには、 SRM コンソールプロンプトで SHOW DEVICE コマンドを使用して下さい:

>>>SHOW DEVICE
dka0.0.0.4.0               DKA0           TOSHIBA CD-ROM XM-57  3476
dkc0.0.0.1009.0            DKC0                       RZ1BB-BS  0658
dkc100.1.0.1009.0          DKC100             SEAGATE ST34501W  0015
dva0.0.0.0.1               DVA0
ewa0.0.0.3.0               EWA0              00-00-F8-75-6D-01
pkc0.7.0.1009.0            PKC0                  SCSI Bus ID 7  5.27
pqa0.0.0.4.0               PQA0                       PCI EIDE
pqb0.0.1.4.0               PQB0                       PCI EIDE

この例では Digital Personal Workstation 433au を使用しており、 このマシンには 3 台のディスクが接続されていることを示しています。 1 つ目は DKA0と呼ばれる CDROM ドライブで、 他の 2 つはそれぞれ DKC0, DKC100 と呼ばれるディスクです。

DKx という形式の名前がついているディスクは SCSI ディスクです。 例えば、DKA100 は 1 つ目の SCSI バス (A) に接続された SCSI ID が 1 である SCSI ディスクであるのに対し、 DKC300 は 3 つ目の SCSI バス (C) に接続された SCSI ID が 3 である SCSI ディスクである。 PKx というデバイス名は SCSI ホストバスアダプタであることを示します。 SHOW DEVICE コマンドの出力に示されるように、 SCSI CDROM ドライブはその他の SCSI ハードディスクドライブとして扱われます。

IDE コントローラが PQxである場合、 IDE ディスクは、DQx というような名前を持ちます。

2.2.4. ネットワーク設定の詳細をまとめる

FreeBSD をネットワークを利用してインストールする場合は (例えば FTP サイト、または NFS サーバからインストールする場合), ネットワークの設定を知る必要があります。 FreeBSD のインストールを完了するためにネットワークに接続できるよう、 インストール中にこれらの情報を入力する必要があります。

2.2.4.1. イーサネットもしくはケーブル / DSL モデムでの接続

イーサネットのネットワークに接続する場合、 もしくはケーブル / DSL モデム経由でイーサネットアダプタを利用してインターネットに接続する場合は、 次の情報が必要になります:

  1. IP アドレス

  2. デフォルトゲートウェイの IP アドレス

  3. ホスト名

  4. DNS サーバの IP アドレス

  5. サブネットマスク

これらの情報がわからない場合、 システム管理者かプロバイダに問い合わせて下さい。 問い合わせると、DHCP を使用して自動的に割り当てていると言われるかもしれません。その場合は DHCP を使用しているということを書き留めておいて下さい。

2.2.4.2. モデムを使用した接続

非常に長い時間がかかりますが、 通常のモデムを使用したダイアルアップで ISP に接続している場合でも、 インターネット経由で FreeBSD をインストールすることができます。

この場合、以下の内容をあらかじめ確認しておく必要があります:

  1. ISP にダイアルする際の電話番号

  2. 接続に使用する COM: ポート

  3. ISP のアカウントのユーザ名及びパスワード

2.2.5. FreeBSD Errata の確認

FreeBSD プロジェクトでは FreeBSD の各リリースができる限り安定するよう努力していますが、 時々バグが発生してしまうことがあります。極まれに、 発生したバグによりインストールプロセスに影響を与えることがあります。 これらの問題は発見され解決されるとともに、 FreeBSD のウェブサイトの FreeBSD Errata に掲示されます。 注意すべき既知の問題が無いことを確かめるために、インストールする前に Errata を確認するべきです。

Errata を含む、すべてのリリースに関する情報は、 FreeBSD のウェブサイトリリース情報の項で確認することができます。

2.2.6. FreeBSD インストールファイルの入手

FreeBSD のインストールプロセスでは、 以下のいずれかの場所に置いてあるファイルから FreeBSD をインストールします。

ローカルメディア

ネットワーク

FreeBSD を CD または DVD で購入しているのであれば、 必要なものはすべてそろっているので、次の節 (ブートメディアの準備) を読み飛ばしてください。

FreeBSD のインストールファイルをまだ持っていないのであれば、 Section 2.13 まで読み飛ばしてください。 FreeBSD を上で示した場所からインストールするための準備について説明しています。 このセクションを読み終わった後、ここに戻ってきて、 Section 2.2.7 を読んでください。

2.2.7. ブートメディアの準備

FreeBSD のインストールプロセスは、FreeBSD インストーラでコンピュータを起動することから始まります--インストーラは、 別のオペレーティングシステムで実行するプログラムではありません。 通常、コンピュータはハードディスクにインストールされたオペレーティングシステムから起動しますが、 “起動可能な” フロッピーディスクから起動するように設定することもできます。 最近のコンピュータの多くは、CDROM ドライブの CDROM からも起動できます。

Tip: FreeBSD の CDROM または DVD を (購入したり、自分自身で準備をして) 持っており、 あなたのコンピュータで CDROM 及び DVD からの起動が可能である場合 (通常 “Boot Order” または類似の BIOS オプションを指定します)、この節を飛ばしてください。 FreeBSD の CDROM と DVD イメージは起動可能であり、 他の特別な準備をすることなく FreeBSD のインストールで利用できます。

起動フロッピーディスクを作成するためには、 次のステップに従って下さい:

  1. 起動フロッピーイメージの取得

    起動ディスクは、インストールメディアの floppies ディレクトリから入手することができますし、また FTP サイトの floppies ディレクトリから i386™ アーキテクチャ用を、floppies ディレクトリ から Alpha アーキテクチャ用を ダウンロードすることもできます。

    フロッピーイメージは .flp という拡張子がついています。floppies/ ディレクトリには複数の異なるイメージがあり、インストールする FreeBSD のバージョンによって、 また場合によってはインストールするハードウェアによって、 使い分ける必要があります。多くの場合は、 kern.flpmfsroot.flp の 2 つのファイルを使用します。 システムによっては、追加のデバイスドライバが必要となります。 ドライバは、drivers.flp イメージで提供されています。 これらのフロッピーイメージに関する最新の情報は、 同じディレクトリにある README.TXT で確認して下さい。

    Important: FTP プログラムを使用してこれらのディスクイメージをダウンロードする時は、 必ずバイナリモードにして下さい。 Web ブラウザによってはテキスト (またはアスキー) モードでダウンロードしてしまうものがあり、 ディスクから起動できないときは大抵これが原因です。

  2. フロッピーディスクの用意

    ダウンロードするイメージファイル 1 つにつき 1 枚のフロッピーディスクを用意する必要があります。 これらのディスクに欠陥があってはいけません。 これを確認する最も簡単な方法は、 自分自身でフォーマットしてみることです。 フォーマットする前のフロッピーを信用してはいけません。 Windows のフォーマットユーティリティは、 不良ディスクがあっても教えてはくれないでしょう。 それらを “bad” とマークして、無視するだけです。 もし、フロッピーを用いてインストールを行うのであれば、 新品のフロッピーを使うことをお薦めします。

    Important: FreeBSD をインストールしようとした時に、 インストールプログラムがクラッシュしたりフリーズしたり、 おかしな動作をした時、 まずはじめに疑うべきもののうちの 1 つはフロッピーです。 フロッピーイメージを新しいディスクに書き込んで、 もう一度試してみて下さい。

  3. フロッピーディスクへイメージファイルを書き込む。

    .flp ファイルは、 いつも行われているようにディスクにコピーされるような、 通常のファイルではありません。 ディスクの完全な内容のイメージです。 したがって、ディスクから他のディスクへのコピーは簡単には できません。 そのかわりに、 イメージを直接ディスクに書き込む特別なツールを使用する必要があります。

    MS-DOS/Windows が動作しているコンピュータでフロッピーを作成する場合は、 私たちが用意した fdimage というツールを使用することができます。

    CDROM に入っている フロッピーイメージを使おうとしており、 この時 CDROM が E: ドライブであった場合、 次のように実行します:

    E:\> tools\fdimage floppies\kern.flp A:
    

    毎回フロッピーディスクを入れ換え、 ディスクにコピーしたファイルの名前を示すラベルを付けながら、 それぞれの .flp ファイルに対してこのコマンドを繰り返します。 .flp ファイルを置いた場所に応じて、 コマンドラインを変更して下さい。 CDROM を持っていない場合、fdimage は FreeBSD の FTP サイトの tools ディレクトリからダウンロードすることができます。

    (別の FreeBSD システムのような) UNIX® システム上でフロッピーへの書き込みを行う場合は、 イメージファイルを直接ディスクに書き込むために dd(1) コマンドを使うことができます。FreeBSD 上では、 次のように実行します:

    # dd if=kern.flp of=/dev/fd0
    

    FreeBSD においては、/dev/fd0 が 1 台目のフロッピーディスクドライブ (A: ドライブ) を表します。同様に /dev/fd1B: ドライブを表します。 他の UNIX の変形では、 フロッピーディスクデバイスには別の名前がついているかもしれないので、 必要に応じてそのシステムのドキュメントを確認して下さい。

これで FreeBSD をインストールする用意ができました。